ウォールストリートで 20 年、生き残ってきたノウハウを開示、日々のマーケット・社会情勢を分析します。

日本航空については言わねばならぬことがどうしてもひとつある。

iconBlogDate.jpg   2010-01-13 17:42:12 | JAL

現時点で方向的にはすでに法的整理の方向に向いているようでまずは最低限は良かったということになりますでしょう。裁判所の手で再生に必要な手立てなどがクリアーに示されるということになりますが、やはり再生は不可能という結論もありえるので完全にOKということにはなりません。

政府が後ろ盾になることの経済的合理性まで追求されるはずですし、これだけ「いんちきファイナンス」を繰り返してきてその上で上場廃止にして既存株主を一気に放り出すという結論が許されるのか? 過去のファイナンスに関わった連中(主幹事証券会社、メインバンク、東京証券取引所および金融庁)は詐欺ではないか??という問題も依然大きいと言わざるを得ません。
今回はそのあたりにフォーカスしてみたいと思っています。

まず会社更生法とは要するに合法的借金の踏み倒し。アメリカではチャプター11です。

UAもノースもみんなこれで再生して今も飛んでますから、法的整理(当然厳しくなる)によって顧客が離れるとか安全性が損なわれるというJALの主張は本末転倒かつ荒唐無稽。

すでに世界中で実績のあるやり方ですし、一度倒産扱いなので組合も解散させられます。全員解雇にして給料半分で再雇用なんて荒療治も(多分できないでしょうが)法律的には可能です。

ただ、社員のインセンティブを維持していくのは相当難しく、よほど頑張らないと「ノース・ワースト」とか罵られるようになる可能性はありますね。身軽になればそのうちどっかと資本提携もできるようになるでしょうし、現時点ではこの選択がベストだと思います。

税金投入の是非は別ですよ、もちろん。


しかし先ほど書きましたように、誰も書いていないけど日本航空問題の本当の闇は別な所にあるのです。

ずばり言うわよ!(あ〜あ、いっちゃった・・・)

鳩山首相は株主にも責任があるなんて言っているけどそれはある特定の株主であってあれだけの債務超過を隠し続けて株を買わされた個人および中小企業、とくにはめ込み先になったであろうみずほの取引先企業はたまらない。(証言多数あり)

それは彼らの最後のファイナンスがわずか一年前、2008年に1500億円にも及ぶ金額が不正に堂々と行われているということに尽きるのだ。

再生委員の調査によってもJALが数年前から債務超過(つまり倒産企業)であったことが既に明らかになっている。最後のファイナンスは2008年6月。問題が表面化したのが昨年9月、この時点で政府の支援が決定した訳だから、たった1年で5000億以上の債務超過に一気に陥るなんてことはどうみても説明不可能でしょう。2008年6月の段階でアウトだったことは明白です。

ということはこの資金調達は当然債務超過を知っていて、将来の返済が極めて危ういことがわかりながら、関係各社を核に無理やりはめ込んだファイナンスであり東京証券取引所がそれにお墨付きを与えて個人および個人に近い法人各社をだまして膨大な損害を与えたことに他ならない。

これに口をつぐんでいるなら、当時の金融庁、金融機関、東京証券取引所関係者は全員違法取引もしくは詐欺罪で逮捕するべきで、さもなくば税金投入はあまりにも国民をばかにしていると言えましょう。

こういった公募増資などのファイナンスをする主幹事証券会社のいわゆるデューデリジェンスの義務履行に関してはきちんと定められていて、少なくとも上場企業に関しては返済見込みのないファイナンスをしてはなりません。

一般的な表現としては

証券取引法の開示規制の下で公認会計士・監査法人および引受証券会社は、発行会社の開示情報の正確性を担保する責任(デュー・ディリジェンス責任)を課されることを通じて、発行会社のコーポレート・ガバナンスに資する。

というのが取引法の基本概念。これを踏み外すことはゆるされないが、この場合たった一年で債務超過が表面化するなど、情報の正確性の担保などとこにもされていないことは明らかだ。さもなくば一年で一気に5000億円の債務超過に陥った経緯を明らかにせねばならない。

つまりは返せないことがわかっていてファイナンスをした訳だ。

主幹事はみずほとゴールドマン。

販売先もこの場合相当問題になる。
そもそも経済合理性のないファイナンスは認められず、ファイナンスで調達するほうもお金を出す方もやくざでないかぎりその合理性が厳しく問われるのが原則。お互いにコーポレート・ガバナンスがある訳で上場企業であればなおさらです。

例えば出入り業者などに株式を無理やり引き受けさせるのは経済的合理性に反する行為でこういう販売行為(はめこみ行為)は主幹事証券会社がしてはならないと決まっています。(そりゃ、納入業者などはなかなか断れないですよね、買わないともう入れさせないよ、なんてことになるのでそういう販売には特に注意を払う義務があるわけですね。)

さて、当時のニュースを改めて見てみよう。
当時何人かブロガーの方もおとりあげになっていた記憶があるのですが、ちょっと記憶があいまいですので、もしそちらのみなさまと重複内容などございましたらご容赦の程を。改めてまとめ直してみます。


2008年6月29日ロイターニュース
経営再建中の日本航空(JAL)(9205.T: 株価, ニュース, レポート)は29日、主力行など計14社を引受先に払込金額1535億円の第三者割当増資を実施すると発表した。財務体質の改善を図り、再建の速度と確実性を向上させたい考え。
 普通株式を対価とする取得請求権付き無議決権優先株を、発行価額250円で6億1400万株発行する。発行期日は3月17日。募集後の発行済み株式総数は、08年1月末現在の27億3238万3250株が33億4638万3250株へと約1.2倍になる。
 将来、普通株式への転換が進むことで希薄化する可能性がある。ただ、発行当初3年間は取得請求を不可としており、JALは2010年度までの中期経営計画期間中の希薄化を制限していると説明している。
 JALの手取額は1515億円となり、これを2008―2010年度の期間中に、燃費に優れる航空機の購入などに1015億円、その他の設備投資に500億円、それぞれ振り向ける。この増資により、燃油価格の高止まりや需要の急減など環境の変化によるリスクへの対応が進むほか、有利子負債削減のスピードが加速するなどとしている。
 新たに発行する6億1400万株について各社の引き受け規模は、UBSセキュリティーズ・ジャパン・リミテッドが1億株、みずほコーポレート銀行とDBJコーポレート投資事業組合、三井物産(8031.T: 株価, ニュース, レポート)の3社が8000万株、三菱東京UFJ銀行が6800万株、双日(2768.T: 株価, ニュース, レポート)が6000万株、三井住友銀行が2200万株、出光興産(5019.T: 株価, ニュース, レポート)と伊藤忠商事(8001.T: 株価, ニュース, レポート)、ジャパンエナジー、新日本石油(5001.T: 株価, ニュース, レポート)、住友商事(8053.T: 株価, ニュース, レポート)、丸紅(8002.T: 株価, ニュース, レポート)の6社が2000万株、コスモ石油(5007.T: 株価, ニュース, レポート)が400万株――となっている。
<2010年度までの中計を上方修正>
 JALは同日、2010年度までの中期経営計画で当期利益計画を530億円に上方修正すると発表した。昨年発表した中期計画の見直し計画に盛り込んだ。従来計画は370億円としていた。
 貨物関連を中心に売上高は減少するが、旅客では航空機のダウンサイジングなどを進めることで、機材の運用効率が高まると見ている。人員削減計画数は変更せず、費用削減効果も500億円で見直さなかった。ただ、諸手当を含む賃金制度の改定を検討し、新たに通年で100億円程度の追加的なコスト削減効果を見込むとしている。
 売上高は2兆2600億円(従来計画は2兆2980億円)、営業利益は960億円(同880億円)を、それぞれ計画する。また、2010年度のROEは9.8%を計画し、D/Eレシオは1.1倍を目指すとした。
 (ロイター日本語ニュース、平田 紀之記者)

なんと!!!
業績の上方修正をして発行しているではありませんか!!
おー! なんといういんちきでしょう・・・・・

さらに問題点は続きます。


問題その1
販売先が完全に利害関係者に集中していること。


UBSに関しては香港筋との空売り取引の問題などがあってかなり複雑なので今回はちょっと書かない。これは別途書きたいと思いますが、以下二番目のDBJコーポレート投資事業組合は政策投資銀行の別働隊で、恐らく株式引き受けをするためにむりくりこちらを使ったのでしょう。
もし民間の銀行が貸出先の株式購入のためにこんな投資事業組合を作ったら一発でアウト! です。なのに我々の税金を使っている政策投資銀行にはこんなことを許している。

以下みずほコーポレートなど、民間の銀行が貸し倒れ防止のために株式を引き受け、三井物産、出光、丸紅、ジャパンエナジーなど、要するに日本航空に燃料などを納入している業者ばかりに販売されている状況。

こういう利益相反は法律ではもちろん、東京証券取引所ルールでも厳しく禁止されている訳であります。

問題その2 
「第3者割り当て優先株発行」と書かれているが実は転換価格の下方修正条項が付いており、これはMSCBに他ならないこと。
それをきちんと説明した報道、および資料が一切見つからないこと。
さらに購入した複数の投資家に確認したところ、本件がMSCBであるという説明を一切受けていないこと。


よく見ると下方修正条項がついている。

目論見書から要約

平成24年3月17日以降の毎年3月17日における修正基準価額が交付価額を下回る場合は当該修正基準価額に修正される。
ただし最低修正価額は当初交付価額の0.5倍(125円)とする。

何のことは無い、倒産寸前の会社が多用するMSCB(Moving Strike Convertible Bond)そのものであります。要するにこれでなければ調達不可能であった・・・倒産寸前であった証拠以外の何者でもありませんね。

問題その3
赤字会社にも関わらずこのファイナンス以降株主優待券を発行し続けたこと。


赤字会社の株主優待券はもはやモラルの問題である。証券業協会のルールには抵触していないというのかもしれないが、年一回の優待券発行は赤字会社であれば真っ先に停止するべきものだろう。
なぜできなかったか??

このファイナンスそのものが株主優待券発行を前提にして利回り計算をされて個人に売却されたからもし発行しなければこのMSCBを買った投資家に訴えられる可能性があるからです。
既存の株主の利益はどうなってしまったのか??

問題その4
本件MSCBにはなんとTIBORプラス300BPの利息が付いていること。


2008年に発行されたCB,社債の中で圧倒的な高金利が付されていること。
優先株に1%以上の金利をつけるのは最早倒産寸前ということを認めたようなもので、それだけのリスクがある・・・ということをきちんと開示して販売したのか、きわめて疑わしい。
実際株は紙切れになってしまった訳だし、この利息も発行して1年半でパーである。主幹事証券会社他はこれを投資家の自己責任として、利息に目がくらんだばかものということで切って捨てるつもりなのか。

以上ざっと並べただけですがわずか一年前にこれだけの問題ファイナンスを行っておりその上での救済、ということをどこも報道しないのはいかがなものなのだろう。

日本航空に罪をかぶせるのは簡単だが、結局はこういうファイナンスを平然と認めて個人に自己責任だ、と頬かむりをする日本の金融機関の体質そのものの問題である、ということを前原大臣には見逃して欲しくないのです。

以上、まずは第一弾。

最後に・・・

当時いろいろなブログを拝見していて同じようなお話をまとめられておられた方が複数おられたと記憶しております。もし引用、参考として出展を記してもよろしいと言うことでありましらたご一報くだいませ。よろしくお願い申し上げます。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
尚、このレポートは情報提供を目的としており、投資の最終判断は投資家自身でなさるようお願い致します。